日本の農業の未来は?-グループ営農の新たな形への挑戦

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               道端に咲き誇る菜の花街道

今春、研修生三人は、新規就農者として独立へ向かって一歩を踏み出す。

四年目を迎える竹内祐輔さんは、佐藤自然農園の後継者として、むかし野菜の
メイン野菜作りを守り続け、さらなる規模拡大と新たな研修生を育てるという責務を負うことになる。
(株)むかし野菜の邑の野菜部門の生産出荷計画を立て、グループへ参加している農人達の作付目標及び生産計画も含めて、指針を出さねばならない。
個性のある生産者を纏めていくことにもなる。皆の生計が掛かっており、グループ内の圃場(およそ6ヘクタールの面積となる)を全て把握しておくことが必要となる
事業立案など経験もしたことがないだけに、現在財務の勉強中であり、苦労することになるだろう。皆の調整役を果たすには一皮も二皮も脱皮しないといけない。

三年目を迎えた後藤堅太郎さんは、自らの農地確保と拡大を徐々に目指しながら
主に情報戦略・広報・販売促進・マーケティング戦略・市場開拓などのコミュニケーション部門を担当することになる。むかし野菜の称号を得るには、最低三年間の土作りが必要とされ、その間、彼も生計を立てねばならない。
マーケットの価値観や消費志向はあいまいな有機野菜から離れ始めており、自然志向が強くなっている。但し、この定義が実にあいまいであり、俗にいう自然農なるものが消費者が考えているほど確立した定義でもなく、市場では概念のみが先行している状況にあり、実態が追いついていっていない。
消費者へ理解してもらうことにかなり苦労していくことになるだろう。
もっと人の機微や心理を勉強し、潜在的マーケットの変化を敏感に感じ取るには
かなりの勉強と努力と苦労が必要となる。

二年目を迎えた南次郎さんは、元々、鶏が好きで、養鶏事業をやりたいということで仲間に加わった個性派だけに、かなり自我が強い。
むかし野菜グループでは加工品の部門を担当することにしている。
人と組むことより自分一人で考え工夫していくことに向いており、この部門を担当させることにした。味噌作りから黄な粉作り、麹作りなどに成果を上げつつある。
養鶏をやるからには、むかし野菜と同じように今までだれも果たしていない質を追求していくことにさせたい。
平飼いと言っても、例えば梨園全てを鶏の運動場や餌場に変えていったり、
自家製飼料と言っても、グループ内みんなで自然農の穀類を作り、野菜くずや
穀類の糟を全て飼料とする(発酵させて餌とする)
ついでに卵だけではなく、完全なる自然農で生産された鶏肉や鶏ガラも同時に
商品化していくことになる。つまりは、ノンケミカルの鶏肉と卵を生産する。
問題なのはそれを実現させるには、最低でも二年間の実験期間が必要であり
軌道に乗せるまでには3年以上を要する。同時にむかし野菜の邑グループ全員の穀類生産に頼らないとそれも実現できない。

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             昨年11~12月に種を蒔いた小麦畑

佐藤自然農園・後藤さん・南さんの圃場を合わせておよそ3反の小麦畑となる。
先ず手始めに、中力粉(地粉)から始めた。
雑草を刈り取り、火をかけ焼き払い、耕耘し、草木堆肥と灰・牡蠣殻などを撒き、
耕耘し畝立て、種を蒔く。麦踏みを子供たちも動員して全員で行う。
そして、3月の下旬、しっかりと大地に根を下ろし、分岐し、鬱蒼と繁っている。
後は除草作業を二度ほどすれば、5月下旬頃に採り入れとなる。
当然に除草剤は使っていないから、除草手間がかなりかかるかもしれない。

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去年収穫した大豆は一回だけ240余名の個人顧客に少量お届けし、レシピを付けて煮豆調理を促し、おそらくは初めて豆を煮る方も多かっとは思うが、概ね、好評だった(?)と勝手に思っている。
二回目はお餅と一緒に黄な粉にして皆様にお届けした。
この方は、実に好評であったようだ。浅く煎り、大豆粉の香りがすると多くのメールが届いた。

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大豆は約300キロほど採れた。その大半は蒸してお味噌に変わっている。
今年は約400キロほどの味噌ができる予定。
240名全員に300g配っても5回は送れると考えている。

課題はトウモロコシの方で、完全自然農を考えていたが、二か年失敗し続け、先人たちにお聞きすると、芯食い虫は必ず発生し、防ぐには若干農薬を使用しないと
無理と、ダメ出しを喰らってしまった。勿論、収穫時に農薬を使うわけではない。
大豆粉・小麦粉・とうもろこし粉が揃うには年末まで待たねばならない。
それから一気に自然農の穀類を使った加工品の試作が始まる。

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     昨日、急に山に登りたくなって昼過ぎから一人久住の山に向かった。
     冷気が心地よく、やさしく心に沁みてきた。


彼ら三人には、それぞれの事業計画を立てるように指示している。
三人は創業者の苦労を全く経験していない。特に農業を一から始めて生活が成り立つまでには元手や経験の無い彼らにとっては不可能に近い。
特にこの自然循環農法では、土つくりに三年以上を要し、生活が成り立たない。
その間は、当農園において、むかし野菜の邑において生計を維持し続けねばならない。
さらに一人農業は限りなく彼らにとって地獄となりかねない。
グループ営農の必要性を体で頭で感じ取っていく数年間になることだろう。

むかし野菜の邑の卒業生達には、所有権を許していないが占有権は持たせたい。
所有権とは絶対支配であり、自分勝手に、思い通りに事が進めることであり、
資本主義の世界では当たり前の概念となる。
ここに日本の農業がダメになっていく理由がある。
農業はきつい労働を耐え忍ぶことになり、単価の安い農産物では世間並みの生活さえ容易に達成できない。そして未来がない。
地域では先祖伝来の農地を子々孫々に伝えていくことが昔は当たり前ではあったが、豊かになった日本では、そんな苦労をすることを農家の子に強いることができない。
未来に夢が持てない地域農業はこのようにして、圧倒的な後継者不足に押しつぶされようとしている。つまりは農地の所有権を誇示してもだれも見向きもしない時代となってしまっている。
これを未来へ繋いでいくためには、一人農業よりもグループ営農が良く、所有権よりも委託された占有権が良い。農産物も量から質へ向かおうとしている。
(未だに国は量しか言わないが)
彼ら三人が先駆けとなって、新たなる形のグループ営農へ取り組んでいって欲しいと願う。
そこでは徹底的に質を追求し、結いの精神である共同作業と分配の考え方を育ててほしいと願ってやまない。そのためには消費者達との価値観共有化と仲間たちと言った思いを持ち続けていって欲しいと願うしかない。
この形が私が二十数年間考え抜いた結論でもある。ミニマムではあるが、ようやく実現可能な試みに近づいているかもしれない。
後は、如何に個人の欲をある程度制御できるだけの仕組み作りが残っている。