美味しい野菜作りとは?-PARTⅢ(有機無農薬の神話)

25.7.21(日曜日)晴れ、最高温度36度、最低温度26度
 
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(無農薬で野菜が作れる?)
 
日本の有機JAS規程には「有機野菜とは、化学合成している肥料及び農薬を使用
していないもの」ということになっている。
その逆で化学合成していない肥料や農薬は使って良いことになっている。最近の国
の考え方では、化学肥料も一度発酵させたら有機肥料ということになるらしい。
 
他方、一般の消費者は、無農薬の意味と自然界の摂理(掟)を理解していないため
(当然なのですが)有機野菜と言えば、無農薬という概念のみ理解して、やたら,
「無農薬」野菜ということを口にされている。
 
少しでも野菜を作られたことがある方は、すだれ模様になっていく野菜を見ており、
虫が集中的にたかり、あっと言う間に溶けていく野菜を目の当たりにしており、
有機無農薬という「概念」に疑念を抱いておられる方も多いようです。
私のセミナーにはその様な方が多く参加されている。
 
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農薬を使用することは是か非かを論じる前に自然界の姿をよく観察して頂きたい
この世の中に虫が居ませんか?虫も天地創造の神(自然)が作られたものです。
その虫は何処で育ち、何処で越冬してさなぎになり、何処で孵化して成虫になっ
いるのでしょう。
有機野菜を生産している農地にも、化学肥料を多投している農地にも、自然界の
林や野山にも、そのような営みが公平に常に行われております。
我が農園にも沢山の虫が生息し、土を掘り起こすと、様々な幼虫が、あるいは、
さなぎが出てきます。当然に草木堆肥という昆虫にとって美味しい餌になるもの
が多く投入された土壌には虫は付物です。(自然界の山野と同じ環境を作る)
 
この自然界の姿を壊すことは、自然循環という自然の浄化システムを壊すことに
繋がり、やがては、そこから食べ物を頂いている人間にとっても自然浄化バランス
が損なわれた土壌で育った食べ物を永年摂っているとやがて遺伝子が損なわ
るなどの様々な機能障害を子々孫々に残していくことになる。
アトピーとは分らない原因不明の症状のことで、最近増加してきた食物アレルギ
などもその要因は分らないままです。
人間だけが特別の存在であることは絶対にありえませんし、そう思っているのなら
それは人間の驕りです。何故なら、人間も自然界の中では、生かされているに過
ぎない存在だからです。このような農業を永年行っていると、そのことを痛切に
感じざるを得ません。
 
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(自然循環システム)
 
もし土壌の中に虫を頂点とした微生物や放線菌などが棲息していなかったなら、
この地球は倒れた木はいつまでも分解されず木のままでしょうし、動物やその糞
などもいつまでもそのままでしょう。怖いことになってしまいますね。
これを自然が持つ浄化機能、即ち、自然循環システムです。
固い物質リグニンやセルロースなどは放線菌が、その他のたんぱく質や炭水化物
などは微生物が、分解してくれます。虫も葉っぱや枝等を食糧として育ちます。
皆さんが毛嫌いされる虫やカビ・微生物などがお互いに食い合い、あるいは、助け
合い、自然のバランスを保っているのですね。
 
一握りの草木堆肥の中には数兆にものぼる端虫・微生物や放線菌が棲息しており
ます。これらが有機物とともに、土壌に施されたら、土の中で、分裂し、土を耕して
くれます。彼らの餌や栄養源は有機物であり、ミネラル分です。
これらが土中にないとしたら、あるいは、施されないとしたら、それは潤いのない
不毛の大地ということになってしまいます。
ちなみに、人間もこのミネラル分が欠乏すると、あるいは、バランスを欠くと大きな
疾患が生まれてきます。
 
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さて、本題に入っていきましょう。
 
オーガニックという概念は、欧州の緯度からいって、北海道の上くらいに位置して
いるドイツやオーストリアが発生の地です。
そこでは、虫も大きな繁殖力は持ちませんし、虫害もそんなに多くはないのです。
日本は、長野県や北海道などのわずかな地点を除いて、四季があり、温暖な地
です。特に関西以西は最近では湿潤で気温も高くなってきております。
虫にとっては将に絶好の生息地となっております。
特に最近の5年ほどは、異常気象の連続で、九州などは亜熱帯ではないかと思
えるほどの雨季と乾季を繰り返しております。
 
そこでは虫、特に害虫が異常発生をしており、トレーに蒔いた白菜の種は、発芽
すると数日を待たず、溶けたように芽が消えて無くなっていることもしばしばです。
夜登虫も異常繁殖し、キャベツにくる青虫も同じです。
このような場合、苗の初期段階や成長期を迎えたばかりの頃、いくらかでもこれら
の害虫を駆除しておかないと、(正確には減らしておかないと)それこそ、大人に育
つ前に、野菜は全て溶けて無くなっていることになりかねません。
忌避剤(木酢・とうがらし・にんにくなど)では予防は若干出来ても、虫に覆われた
場合はまったくといって無力です。
画して、「数年前でしたか、佐藤さんとこには、白菜は無いのですか?とか、キャベ
ツは植えておられないのですか?などと質問が多数寄せられたことがあります。
種を蒔いても数回全滅し、ようやく苗が育ったと思ったら、すでに秋たけなわの頃、
今度は成長期に寒くて、ついに白菜が育ちませんでした。
 
そんなことなどが重なり、数年前から瞬間的に効力のある神経性の農薬を使用
するようになりました。これは育苗段階や成長期にのみ1~2回使用しております。
勿論、葉面散布です。5月末頃から11月中旬頃まで、猛烈な害虫被害が発生し
ます。この大量の害虫発生現象はほぼ5年ほど前から顕著になり、地球温暖化
進んでいるせいでしょう。もはや忌避剤程度ではまったくといって効果がありません
ある時、キャベツの畑をつぶし(耕運)ますと、30分も立たないうちに、多くの幼虫
がぞろぞろと隣の畝に這って、移動しておりました。それこそ、音を立てて・・・
 
※農薬の光合成分解
農薬と言っても、瞬間的に効くものから、持続的に効くものから様々であり、また、
葉面散布から葉枯らし剤や土中消毒まであります。
その特徴は光合成分解し易いものと、し難いものに大別されます。
○瞬間的効果=光合成分解し易く、一日若しくは半日程度しか効果が無く、葉面
  散布仕様のもの。
●持続的効果=光合成分解をし難く、一週間程度の効果がある。葉面散布から
 土中消毒のものまである。
 
所謂残留農薬はこの後者のものであり、野菜の植え付け(種蒔き)から出荷まで
実に20~30回行われている。週に二回以上というものまであるようです。
その中で一番危険なものは、土中消毒と称する葉枯らし剤まで含めた残留性の
強いものです。
土中の幼虫・さなぎから微生物まで殺してしまいます。このようにして大地は不毛の
砂漠と化していきます。困ったことに、多くの農家がこの土中消毒と称する薬を農薬と認識されていないことです。(少なからずの有機農家も含めて)
 
当農園では、というより、草木堆肥を使った自然循環農法では、土を汚染する
土中消毒などはもってのほかであり、虫が大量発生する一時期のみ、1~2回
程度の葉面散布で即効性のある神経性の農薬(光合成分解し易い)を使用して、
瞬間的に虫を殺し、野菜が成長して害虫にも耐えられるようになった後は自然の
営みに任せるか、目に付いた害虫を捕殺するようにしている。
土を汚染する行為は自然界のバランスを壊します。
セミナーでのこの話は、わずかでも農業をかじった方々には、「ホッ!」とする情報
のようです。農薬は例え絶対悪であっても、必要最低限の使用は、この温暖化が
進む日本では、今や、「必要悪」になっている。
セミナー参加者は一様に納得したような、安心したような雰囲気が会場に流れる。
 
有機農業で認められているホルモン資材と称するものは、例えば、交尾しても
子供は出来ないなどの生殖障害を起し、虫を撃退する物質です。
皆様は遺伝子組み換えがどうかと、議論されておりますが、それに勝るかもしれな
い自然破壊に繋がりますね。
 
 
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様々な方が当農園を訪れるが、他の有機野菜生産農家で勉強したある若い人が
有機野菜や自然野菜を生産している畑では、虫が居なくなるんだそうですね」と・・
またあるイメージ有機客(概念論者らしい消費者)は、「農薬など使うなんて」と・・・
批判して帰って行かれる。
他方では、多くの有機野菜通販会社から取り寄せた有機JASに乗っ取った野菜に
まったく虫食いの跡が無く、所謂「見てくれきれいな野菜」に味も香りも無く、美味し
さも感じない有機野菜がマーケットに溢れています。
 
国が定めた有機JAS規程の有機無農薬という概念に操られ、振り回されている
有機農産物市場があるのも事実です。
 
私が申し上げたいことは、(概念の有機野菜とは区別して、当農園ではむかし野菜
と言う言葉を使っていますが)実際の自然循環農業を行っている農業現場の現実
の声を聞き、生産者に限らず、消費者が自分の考え方や価値観を持ち、自然の
営みとこの現実をどのように判断されるのか、考える場を提供し、農業の今後と
食の大切さと子供達の未来を考えて頂きたいと、切に願って止みません。
 
以上が農業セミナーの内容でした。