美味しい野菜作りとは?

25.7.5(金曜日)曇り、最高温度35度、最低温度25度
 
 
「美味しい野菜作り」ー農業セミナーの中から抜粋
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(美味しい野菜とは?)
 
美味しさの物差しとは一体なんだろう?
 
この野菜、美味しいね!とか、甘い!とか、聞きますと、この人達は一体なんで
野菜の美味しさを決めているんだろう、と思ってしまいます。
私にとって野菜の美味しさの基準は、むかし子供の頃に食べた畑で捥いで食べた
トマトや胡瓜の味、つんと鼻に来る香りとさっと口に広がる旨みやシャキシャキとし
た食感でした。
 
但、それ以降は、体のために食べなくてはという思いで野菜を単に義務的に食べ
ていたように思います。子供の頃から、野菜は無理やり親から食べさせられていた
ことを思い出してしまいます。
いまの子供さん達が野菜だけ残すというのは、おそらくこのような感じなんでしょう。
時にはそんな感覚を大人になっても残しているご主人さんもいるようですが・・・
 
この草木堆肥農業(むかし野菜=自然循環農法)に行き着くまで様々な農法、
と言うより、土作りを試してきました。その時、私を導いてくれた美味しさの基準は
こどもの頃に味わったあの感覚でした。
そんな中で、様々な古書や学会の先生達の本を読み、試行錯誤をしながら、一つ
の野菜の美味しさの基準を作りました。
 
「味と香り」
味香りのある野菜とは、その野菜本来の味覚や香りを引き出してやること。
野菜に糖質やビタミンが豊富に含まれていること。
 
化学肥料や畜糞には窒素が大量に含まれており、野菜の内部に成長過程で増殖
するミトコンドリア(成長酵素)と相関関係にあり、窒素が多い土壌で育てば、
ミトコンドリアは増殖し続ける。その土壌では、野菜は急成長し、野菜の内部に
炭水化物やデンプン(苦い)が増え続ける。そして、大きくなれば、即、出荷となる。
 
逆に緩効性肥料(草木堆肥など)を施肥した土壌では、植えてから2カ月半経過
すると土壌の窒素分は減少してミトコンドリアの増殖が止まる。
そこから完熟期に入り、今度は野菜の内部に分解酵素が現れ、蓄えたデンプン
などを糖質やビタミンに分解していく。(完熟野菜)
例えば、さつまいもや南瓜などを常温保管して置くと、同じ現象が起こり、甘くなる。
これを追熟と言います。
 
※味香りはどうやら土がミネラル分に富み、しかも低窒素であることがその条件の
 ようで、実体験により得た結論ですが、野山の自然の中で育った山菜が目標
 となりました。
 
「旨み」
単に甘いだけの野菜であれば、例えば、「塩トマト」は塩分を含ませた水耕栽培
塩分ストレスをかけて、水や肥料を野菜が吸収できにくい環境を人工的に作り
上げる方法で、トマトは甘くはなります。
しかしながら、旨みは甘みとは異なり、舌の奥の方で感じるもので、この味覚は
えぐみ(灰汁など)や苦味を感じるところです。
例えば、塩化ナトリウム(精製塩)は単に塩辛さや苦味を感じると思いますが、
岩塩や海塩などは、わずかに旨みを感じると思います。これは不純物=この場合
はミネラル分を大量に含んでいるからです。
 
※常に土壌を高ミネラル(ミネラル分のバランスは必要)の環境に維持していくと、
 野菜の本来の灰汁成分などは、えぐみから旨みに変化していくことが分って来た
 草木堆肥歴が3年を経過してから劇的に野菜にこの旨みが現れてくる。
 
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「食感」
子供さん達が野菜嫌いになっていく一つの要因に「噛んでも噛んでも口の中に
残る野菜の繊維」があります。
家の次女はひどいアトピー症状でした。その要因の一つに野菜嫌いがありました。
幼児の頃、この娘は給食で出された野菜を飲み込めず、最後まで残されていまし
た。口の中にはいつまでも消えて無くならない野菜が一杯詰まっていたそうです。
その娘も 今では一児の母、今は農園の手伝いをしており、この野菜のおかげで
アトピーの跡もきれいに完治しております。
 
高窒素の土壌で育った野菜は急成長しますので、倒れないために茎や葉脈に
強い繊維質を持って成長していきます。
そのため、噛んでも歯切れが悪く、いつもでも繊維質が口の中に残ります。
実は私も繊維質の代表のような小松菜が嫌いでしたが、草木堆肥で育てた小松菜
を食べてみると、口の中でいつの間にか溶けていきます。
しかも味香りがあり、ほんのりと旨みを感じ、それ以来小松菜が大好きになりました
 
※低窒素で育てた野菜は化学肥料で育てた野菜(例えば小松菜)と比べて成長
のスピードは1.5倍以上を要します。土中に窒素を求めてじっくりとひげ根を張り
茎を太く持ち、葉脈も厚く育ちます。土中のミネラル分などをじっくりと吸収して
しっかりとした土台を築いてから、成長していくのですね。筋張らず、太い茎と葉を
つけているため、歯切れが良いのです。
このため、収穫途中ではぽっきりと折れてしまうことも多々あります。
 
以上が私が考えている野菜の美味しさの物差しです。
私も一時期、美味しさを甘さと捉え、米糠や油粕を使った所謂「ぼかし肥料」を
多用した時期もありました。確かに甘くはなりましたが、私が目指すべき旨い
野菜ではなく、味香りも薄く、食感も良くない。
悩んだ末に行き着いた土作りが草木堆肥一本に絞った農法でした。
いつしかぼかし肥料も止め、堆肥一本に絞り込んだ農法を、先人達の叡智が
作り上げた「むかし野菜」と表現するようになりました。
但し、むかしの農人は人糞をこなして、追肥として施肥していたことを思うと、
先人の知恵を借りた自然の野山に近づける有機自然農法とでも言えばよいので
しょうか。
 
結論を申し上げれば、美味しい野菜とは、単に新鮮だとか、甘いとかではなく、
まして、有機無農薬という観念=概念でもなく、自然の野山などと同じく、
自然循環の浄化サイクルを保った土で育った糖質やミネラルに富み、栄養価の
高い野菜のことを言うのではないでしょうか。
従って、農人は、そのような環境を作り上げることに腐心して、土消毒はしない、
窒素過多にはしない、できるだけ、自然循環のサイクルは壊さない、ということに
心がけていけば、美味しく栄養価に富んだ野菜作りができるようになります。
最後に、自然を支配することは決してできません。いかに自然と向き合い、折り
合っていくかが大事なのだということを痛感させられています。
露地栽培はハウスなどの管理栽培とは異なり、自然の変化や、脅威、そして恵み
を受け、大いなるリスクを受け、その代わりに美味しく栄養価の高い野菜を手に
することができます。